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浮き草の知恵

自然・ふしぎ・なるほど

ウキクサをご存知だろうか? 金魚や熱帯魚を飼ったことのある人は手にしたことがあると思う。

今日は、この2㎝余りのウキクサについて考察してみよう。よりどころのない不安定な仕事は「浮き草稼業」といわれる。では、本物のウキクサはどうなんだろう。

 ウキクサはその名の通り、水に浮かんで生活している。気楽なものである。形も葉っぱが1,2枚浮いていて、ひっくり返すと葉の裏から根が出ているだけの単純なものだった。種子を作る高等植物の中では、もっとも体が小さいのがこのウキクサの仲間であるらしい。こんなちっぽけなウキクサに工夫などあるのだろうか。

ちょっと待てよ、葉から根が出ていると言うのも奇妙と言えば奇妙だ。

実は、ウキクサの葉に見える部分は茎だそうだ。浮き沈みしやすいように、体の構造を出来るだけ単純にするために、葉は退化し、代わりに茎と葉の両方の機能を兼ねる「葉状体」という器官を作り上げたのであった。

単純に見えるこの葉状体には工夫が詰まっている。葉状体の中は、空気を溜めるための細かな気室が並んでいる。ここに空気を溜めて浮袋のように水に浮かぶのである。しかし、こんな小さな葉状体では、わずかな波に飲み込まれて転覆してしまう。そこで、葉状体の裏側からは長く伸びた根が水中へと垂れ下がっているのである。

水は贅沢にあるから、水を求める必要はない。また、浮かんでいるだけなので、体を支える必要もない。そもそもウキクサは、根を長く伸ばす必要がないのだ。それでも長い根を伸ばすのは、根に錨のような役割をさせて、体を安定させる為である。実際にウキクサの根は重たく、水に沈むようになっていて、根の先端には膨らんだ重りがついている。ここを「根帽」というらしい。地に足がつかない浮き草暮らしでも、やはり根は大切なのだとわかる。

それだけではないのだ、葉状体の表面には細かい毛が無数に生えていて水をはじく。裏側は逆に水に吸い付きやすくなっている。念には念を入れて安全を図っているのである。だから、ウキクサが転覆することはめったに起こらないのである。

  ♬ 水にただよう 浮草に おなじさだめと 指をさす

演歌「みちづれ」の歌詞にあるようにウキクサの不確かな存在に自らを重ね合わせる人も少なくない。

吹けば飛ぶような小さなウキクサでさえ、工夫すれば押し寄せる波を乗り越えることも可能なのだ。葉状体は、細胞分裂のように次々と新しい葉状体を生み出していくのである。夏になって日差しが強く温度も上がると増殖のスピードは加速し、あっという間に田んぼの水面を覆いつくしてしまう。

一面を埋め尽くしたウキクサは、水温を下げてしまう。さらに、プランクトンの光合成を抑えて水中の酸素を減らしてしまうのである。

しかし、気ままに見える水上生活にも不都合はある。冬になると水面を氷が覆ってしまうかもしれないのである。そのため、冬の訪れを前にしたウキクサは、越冬用の芽を作って水の底に沈んで避難するのである。浮いているだけが能ではないのだ。温かい水の中で冬を越し、春が訪れると、ふたたび浮かび上がって新しい芽をだすのである。

夏場はしっかり稼いで、冬場は沈んで寝て過ごす。まさに、浮き沈みの激しい生き方なのである。それも戦略のうちだろう。

浮き草稼業とは言ってもウキクサの暮らしは決して馬鹿にしたものではない。学ぶところが多いのである。

例示には出したくないが、北海道の観光船の事故はウキクサに学んでいれば起こらなかったと断言できる。

今回の交差点は慎重の上に慎重を期すかどうかの判断でしょう。石橋を叩いて渡るは小学校4年生で学んでいる。

散歩の止まり木 ここ